長年自分の側においてきた家具たちには、自分の人生の時間が刻まれていて、そこに自分や家族の思い出をみつけることができます。
店内にならぶアンティークの家具たちにも、それらを大切に使ってきた人や家族の思いが込められています。

持ち主の来歴がわからないアンティークの家具にも、「話すこと」は尽きません。全体を感じ、デザインや様式、木やガラス、ちいさな留め具などそれぞれの素材にまずは目が向き、家具がつくられ誕生した時代の出来事などにも心は向かいます。そこにはたくさんの発見があり、家具としての歴史の物語が眠っています。
海を渡り私たちのもとに届いたばかりの家具たちはどれも寡黙。だから、こちらから話しかけてその歴史の扉を開けてみたくなる・・・

今回到着したこちらもそう。
このスリムで背高いホールローブには、家具工房のネームプレートが残されていました。デザインなどから家具メーカーがわかることは珍しくないけれど、扉を開けた目の高さに付けら小さな一枚のネームプレートに歴史の物語は書き込まれていました。

SHEPHERD & HEDGER
HOUSE FURNISHERS
SOUTHAMPTON.

と読めます。すなわち、イギリス南部の港町サウサンプトンにあった家具工房SHEPHERD & HEDGER社がつくったホールローブだとわかります。
このホールローブは、工房の歴史と家具のデザインと状態などから、1910年ごろにつくられたと考えられます。
1910年ごろのイギリス・サウサンプトンといえば、最初の航海で大事故にあった豪華客船タイタニック号を思い出します。タイタニック号は、1912年4月10日にサウサンプトンの港を出航して、ニューヨークを目指しましたが、出航から5日後の4月15日には北大西洋の海に沈み、母港サウサンプトンへ戻ることはありませんでした。10年ほど前にイギリスで制作された連続ドラマ「ダウントン・アビー」も、このタイタニック号のエピソードからはじまりました。

SHEPHERD & HEDGER社は、家庭向けの家具、ホテルなどの客室家具製品を製造していただけではなく、タイタニック号の船主、WHITE STAR LINE社が所有した豪華客船の内装家具も手掛けていたといわれていますが、このホールローブがサウサンプトンの家具工房でつくられていたころ、港には出航を待つタイタニック号が停泊して時期と繋がります。タイタニック号と同じ時代、同じ街の空気を吸い込んだホールローブがいま、はるかに離れた東アジアの国際貿易港・神戸にあることに感動せずにはいられません。

 


販売会社の社名タグも残っています


こちらは製造時のものではなく後から造られた棚板です


ワインのたるとして使用されるオーク。
本体だけではなく、背面も無垢のオークを6本使用した構造です。
重みもあるので私が押しただけでは動きません。

修復を済ませて店内に到着したばかりの愛しいこのホールローブもやはりいつかは新しいオーナー様のもとへとお嫁に行くことになることでしょう。
玄関に置かれコートが掛けられるかもしれません。シューズケースや衣装棚、ブックケースの収納庫になるかもしれません。あるいはリビング迎えられてとっておきのウィスキーが並べられるかもしれません。
どんな風に使われても、あらたな持ち主の時間や思い出が、100年あまり前のサウサンプトンの歴史の記憶の上に刻まれていくことになるでしょう。

本品「英国 オークホールローブ/ワードローブ」はただいま神戸・三宮の店内でご覧いただけます。

素敵なめぐり合わせを貴方にも。
家具と共に皆様のご来店をお待ちしております。

 

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